ゴールドコラム Gold Column

結婚指輪と愛の指輪の歴史 ~時代と宗教による違い~

結婚指輪というと、日本ではプラチナかゴールドか…と迷う方も多いようですが、海外ではもっぱら金(ゴールド)が主流なようです。
そんな金(ゴールド)の結婚指輪にも、宗教によってさまざまな歴史がありました。



結婚指輪のはじまり

古代から続くジュエリーの歴史の中でも、指輪は常に多くの人々に愛好されてきました。
特にメジャーだったのは署名のかわりに捺印できる「印章指輪」だったようですが、「結婚指輪」に分類されるようなものも古くからあったようです。
最も古いものは古代ギリシアの時代にさかのぼるとのこと。愛の神エロスを描いたものや、「愛しの○○(女性の名)」と銘を入れた指輪などもありました。

“印章指輪と同様に、愛の指輪もまた古代ローマ人の生活と切っても切れないものであった。
詩人オウィディウスは『愛の歌』のなかで、指輪を「我が愛しき人の指をひと巡りするあの妙なる品、その価値は贈るものの愛をおいて他になし」と記している。「変わらぬ愛の徴に、この指輪を捧ぐ」という意味のラテン語を刻んだ指輪は、オウィディウスに触発されたものであろう。”

(引用:指輪-エジプトから20世紀まで 淡交社)

どうやら愛情表現は今も昔も変わらないようですね。

古代ローマでは「(結婚)指輪の交換」の慣わしはありませんでしたが、商取引成立の際に指輪を交換するしきたりから、結婚の誓いとして婚約者に指輪を贈るという習慣が生まれました。 また、それまで鉄製だった婚約指輪も、2世紀になると裕福な人は金(ゴールド)を使うようになったのだそうです。

ちなみに「指輪の交換」の発祥は古代エジプトだと言われています。
指輪の丸い形を永遠のシンボルとして結婚儀礼に用いたのがはじまりなのだとか。
エジプトが発祥というのは、ちょっと意外な気もしますね。

キリスト教の指輪

初期のキリスト教では、ローマ時代に流行した「握り合う手」や「向かい合う男女の胸像」を彫った指輪が主流だったようです。 これらの図柄に文字や十字架が加わったり、全く違うデザインが流行した時代もあったようですが、中世になると再びこの握り合う手と文字を刻んだ指輪が復活しました。この指輪は「フェデ(忠実)・リング」と呼ばれ、約600年もの間支持を得ていたそうです。

また、フランス語で愛のことばを刻んだ指輪も、長い間親しまれていました。 そのほか、15世紀には2つの指輪がぴったり重なるようにできている「ギメル(双子)・リング」が考案され、16世紀にはハートやキューピッドの頭部のカメオ細工が施された指輪や、「わたしを忘れないで」を意味するドイツ語「Vergiss mein nicht」の頭文字である「VMN」や英語「Forget me not」の頭文字「FMN」が添えられたものも好まれたようです。

おそらく仕上がりの精巧さや美しさは現代のものには若干劣るとは思いますが、愛情表現と同様、デザインの発想においても、昔も今もあまり変わらないようですね。

なお余談ですが、同じキリスト教の中でも正教会(ギリシャ正教)の結婚式では、現代でも指輪の交換だけでなく戴冠式も行われているのだとか。 これはリース(花輪)か金(ゴールド)の冠を被る(付添人に持ってもらう)儀式で、結婚とは新郎新婦が国王・女王として新しい家庭という王国をつくるものであり、信仰を貫く証として行うものなのだそうです。
こういった儀式があると、喜びと緊張だけでなく、新生活に向けてよりいっそう気持ちが引き締まりそうですね。

ユダヤ教の指輪


ユダヤ教というとキリスト教よりはなじみが薄いかもしれませんが、このユダヤ教の結婚指輪はなかなか個性的なようです。

“現存する最も古い例は、フランス東部コルマールのユダヤ人居住区に伝わるもので、14世紀に作られたこの指輪は、太いフープに建物の形をしたベゼルを取りつけた。この建物はエルサレムにあるエホバの神殿であるとする説もあるが、むしろ新婚の二人が家庭を成す家の象徴と見る方が妥当であろう。”

(引用:指輪-エジプトから20世紀まで 淡交社)

要するに、一般的な宝石のついた指輪の宝石部分が、金(ゴールド)の家になっているのです。
これは屋根の部分ををぱかっと開けると、ヘブライ語で「幸運を祈る」という意味の文字が現れるのだとか。
たしかに独特なデザインですね。
さすがにつけたままだと日常生活において不便ですし、実際には儀式用のもので、宝物として大切に保管されていたようですが、指の上に小さい金(ゴールド)の家があるとか、屋根が開くとか…ちょっと楽しそうな気もしませんか?

なお、この建物がついていないパターンの指輪はヘブライ語の銘が刻まれているものが一般的だったようで、この様式は17世紀まで続いていたのだそうです。

時代だけでなく宗教によっても、流行はさまざま。
とはいえ、どの時代の結婚指輪もそれぞれとても魅力的で、愛情にあふれていますね。

参照文献
『指輪-エジプトから20世紀まで』/淡交社
『世界・ブライダルの基本』/日本ホテル教育センター

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