指輪ブランドを数軒巡っていたお二人にとって、ithは2か所目のブランドでした。
どういったデザインが良いか、具体的にはまだイメージがありませんでしたが、
これまでアクセサリーを着けることのなかった男性が着け続けていられるような、
手によく馴染んで着け心地が良いものというご要望をお持ちでした。
ithに行きたいと思っていただけたのは、《ピアチェーレ》という
ダイヤモンドがジグザグに配置されたデザインに女性が一目惚れしたのがきっかけでしたね。
イタリア語で『喜び』を表す《ピアチェーレ》の石留めは
結婚へのハッピーで嬉しい気持ちが表現されています。
実物もうっとりするほど気に入っていただけました。
《ピアチェーレ》と同じ留め方のまま、
別の指輪をベースにアレンジとして取り入れるという選択肢もありましたが、
着けやすいということを優先し、形はお二人揃ってストレートフォルムを選択されました。
お二人の一番のご要望である『着け心地』を叶えるために
どのように作ることができるかを一緒に考えます。
指輪の幅は、お二人とも細身なものを好まれました。
細身なものをベースにすることで、着け心地は軽くなります。
さらにお手元にフィットさせるために、厚みを少なくすることも検討しました。
細身の幅で、さらに厚みも少ないとなると、心配になるのは強度です。
プラチナや18金の素材であれば、もともとある程度の硬さはありますが、
極端に地金量が少なくなると、変形のリスクが上がります。
そこでお二人には、華奢なデザインでありつつ強度を高めるために、
土台となる素材として『鍛造製法』をお勧めしました。
指輪になる前の素材の段階で強度を高めている『鍛造製法』であれば、
一般的な鋳造製法と比べて、着け心地や重さ、地金の色味にもほとんど違いがないまま、
丈夫な指輪を制作することができます。
お二人も『鍛造製法』の安心感にご納得され、
女性の指輪には《ピアチェーレ》と同様の石留めを、
男性の指輪はシンプルさが際立つ鏡面の仕上げで、制作を始めました。
女性の指輪の内側には、お二人分のお誕生石も並んで留めています。
指輪の仕上がりも大変気に入っていただいた様子で、
何度もお手元を眺めて、可愛い可愛いとおっしゃってくださって、私自身非常に嬉しかったです。
これからこの指輪が、お二人の日々にそっと寄り添いながら、
かけがえのない時間を重ねていく存在になりますように。
またいつか、お会いできる日を心より楽しみにしておりますね。
つくり手 櫻井