2021.05.09 代表ブログ

鍛造と切削を使った、新しい結婚指輪

元々ithは、「たくさんよりも、ひとつをたいせつに」できる限りお客さまの希望を叶えたい、一人一人のお客さまに寄り添い、身に着ける人が本当にいいと思える指輪を一緒に見つけたい、という想いで2014年の6月に吉祥寺にアトリエを構えました。


今、度重なる緊急事態宣言で未来の予測ができない中で、この大変な時期が過ぎ去るのをただ待っているのではなく、新しいチャレンジをして少しでも前向きな気持ちで進んでいきたいと思い、新しいコレクションを発表することにしました。



去年の秋頃から新作のアイデアを考えはじめた結婚指輪デザインは10ペア、今までのithにはない製法に挑戦した指輪です。


鍛造(たんぞう)”という、地金の耐久性を強くすることにこだわった製法で、これからご夫婦としての歩みをスタートするお二人が、目まぐるしく変化する世の中でも、固い絆で結ばれ、いつまでも変わらない気持ちを持ち続けられますようにと願い、コレクションにしました。


ithには、有機的なカーブやツイストなどの動きのあるデザイン、職人の手仕事や遊び心を感じるクラフト系のデザインなど100を超える指輪があります。いろいろなデザインを用意し、選ぶ人にとってのベストな指輪を見つけるための、考えるベースとなるようにという意味もあり、たくさんの種類を揃えています。


結婚指輪を選ぶ時には、身に着けた時の指の印象を美しく見せる、シンプルで年齢を重ねても似合う、自分の個性を指輪に反映させたい、など人それぞれにこだわりがあります。中には、つくる工程や製法にこだわるお客さまもいて、今まではそれに応えることができませんでしたが、鍛造製法という新しいコレクションが加わることで、ithで叶えられることが1つ多くなります。それから、表面のテクスチャも選べるデザインが多くなる分、ちょっとした違いを吟味する楽しみも増えました。



鍛造と聞くと、ハードな印象で今までのithとは方向性が違うように思うかもしれませんが、今までと、この鍛造コレクションには共通する部分があります。それは手仕事のぬくもりです。


鍛造製法には大きく分けて2つの製法があります。1つは、金属の線を曲げて輪のかたちにする方法、もう1つは金属の塊から指輪の形状をくり抜く方法です。ithの鍛造は前者のつくり方で、職人がハンマーを使って金属を固く引き締めてつくる昔ながらの製法でつくられています。


また、ithの鍛造の指輪の整形加工では、旋盤という専用の機械を使って作業を行います。“切削(せっさく)加工”と言って、表面と側面の幅や厚み、形状を正確に出す機械加工です。機械の性能よりも、それを使いこなす職人の経験に裏付けされた感覚が重要な工程です。切削加工の後に施す表面のテクスチャは、修練を重ねた職人の手仕事が欠かせません。


鍛造、切削、表面にテクスチャを入れ完成する指輪は、機械加工と職人の手仕事が両立できてはじめて出来上がります。人の手がどの工程でも加わっているからこそ、ぬくもりが感じられるあたたかな結婚指輪になるのです。



このコレクションを制作するにあたり、協力してもらうことになった工房が東京の三軒茶屋にある〈工房フジモリ〉です。1970年創業で50年以上に渡り鍛造・切削の昔ながらの製法を使い、1つずつ手づくりのオーダーメイドにこだわってジュエリーを制作している工房です。ithのものづくりの精神と重なる“一人一人に合ったオーダーメイド”という共通の部分があり、協力して制作をすることになりました。


実は私が学生だった頃に、この工房の存在を知って訪れたことがありました。就職活動中だった私に、現在の社長の藤森さんがとても熱心にアドバイスの言葉をかけてくださったのを思い出します。18年の時が巡り、まさか一緒に結婚指輪をつくることになるなんて。人とのご縁は何があるか分からないものです。



もうあと少しでithは7周年を迎えます。“お客さまに寄り添った、ぬくもりあるものづくり”をアトリエがはじまってからの理想としています。


お客さまに寄り添うというのは、当たり前のシンプルなことなので多くのブランドや企業が理想として掲げていることだと思いますが、いざ本気でそれを実践するとなると、とても難しいことだと痛感します。一人一人のお客さまの要望を叶えるためには、ルールを決めて安定した運営をするよりも何倍ものエネルギーが必要だからです。


それでも、このコロナの危機をチャンスと受け止め、ithの全員が真摯にお客さまに寄り添うという同じ気持ちを持って前に進んでいくことができたら、強く、たくましいブランドになれると私は信じています。



ith 高橋亜結


鍛造コレクション

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