こんにちは、つくり手の前堂です。
“指輪づくり” について、私たちithのつくり手が工房で学ぶリアルな様子をお伝えする《つくり手指輪制作ブログ》シリーズをお届けいたします。
(詳しくは イントロダクション記事 をご覧ください)
今回は、指輪の仕上がりを左右する指輪の研磨について綴ります。
指輪を磨く工程は、全てのデザインに施される指輪づくりの基本工程です。アニスを彫る前に指輪の形を整える工程を職人の新居さんに教わりましたので、ぜひお付き合いください。
《過去の記事はこちら》
型から取り出した状態の指輪
こちらが型に金属を流し込み、取り出した状態の指輪です。
形を整える前の指輪は、大きな出っ張りや凹凸がたくさんあり、表面もガサガサした状態です。
ここから様々な工具を駆使し、いくつもの工程を重ねて形を整えていきます。
凹凸を滑らかにする
まず最初に登場するのは [ヤスリ] です。
種類も様々で、面が平面 or 曲面、ヤスリの目が荒い or 細かい など、磨く面の形や凹凸具合に合わせてヤスリを使い分けて削っていきます。
簡単そうに見えて、とても繊細なヤスリがけ。
“ヤスリを真っ直ぐ当てた状態を保ちながら、均等な力で削れるかどうか” がポイントなんです。
指輪に対してヤスリを斜めに当ててしまうと、歪んだラインで削れてしまいます。真っ直ぐにヤスリがけをするためにどんな工夫が必要か、職人の新居さんにお手本を見せてもらいました。
見様見真似でヤスリがけした指輪がこちら。
最初の写真と比べて、大きな出っ張りやガサガサした表面がなくなりました。
幅と厚みを整える
指輪の幅や厚みを整えるために使うのが [ノギス] という工具。
幅や厚みを計測し、バラつきがあれば厚い部分・太い部分にヤスリをかけて均等に揃えます。
“ここだけ少し厚いから、この部分だけ削って薄くする” という微調整は、実は本当に難しい作業です。
均等に整えたはずが、不要な部分も削っていた…ということの繰り返しで「このままでは指輪がどんどん薄くなり、ペラペラになってしまう!」と危機を感じて新居さんに助けを求めました。
ベテランの職人になると、ノギスを使わなくてもある程度削るべき箇所がわかるのだそう。シンプルな作業ほど、職人の技量や“目”が試されるのだと実感します。
新居さんの手の中でどんどん均等に整っていく指輪。本当に魔法を見ているような感覚になりました。
一番力が必要な作業・ヘラがけ
針のように尖った工具 [ヘラ] です。
この工具、どうやって使うと思いますか?
意外なことに、指輪の表面にゴシゴシと押し当てて使用します。
ヤスリで大きなの凹凸を整えた後に、より滑らかにするのがヘラがけの工程です。
ゴシゴシ、無心で押し当てていきます。
写真だとなかなか伝わりにくいのですが、実は今回の作業の中で最も力が必要な作業なんです。一本の指輪全体にヘラがけするだけで、腕や指が痛くなり疲労困憊…。とても驚きました。
「ヘラがけすることで金属の粒子がより強く結合して、指輪の表面の強度も上がるんだ。このひと手間をかけることで、仕上がりも変わってくるんだよ。」
と、細やかなこだわりを新居さんが話してくれました。
より細かく研磨する
こちらはよりピカピカに磨いていくために使用する [研磨剤] です。
この研磨剤をフェルトなど、指輪の形状に合わせた先端につけます。
研磨剤つきのフェルトを回転させると、表面が平らになり次第に艶が出てきます。
この工程で重要なのは、“光の反射を見ること”だと新居さんが話してくれました。
凹凸のない平らな面になると、表面に映る光が真っ直ぐに反射します。この光の反射だけを確認しながら磨いていくのだそうです。
ヤスリがけやヘラがけとは違って力は必要ない工程ですが、同じ部分を研磨しすぎて形が乱れないよう、集中力が必要な作業でした。
下地の完成!
側面もしっかりと研磨して、下準備が整った指輪がこちら。
研磨前の最初の状態はこちら。
全然違いますね!
シンプルなことほど難しいと改めて実感することができた[磨き]の工程。彫り模様を入れるのはこれからですが、多くの工程を経て丁寧に整えた指輪に既に愛着が湧いてきています。
ここからやっと彫りの工程に入ります!
目指すは《アニス》の彫り模様。
楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです!
- #3へつづく-
つくり手 前堂