プロポーズリングに始まり、結婚指輪と婚約指輪の制作をお任せくださったお二人。いろいろなお店で指輪を試着してみて、“これぞ!”と思えるデザインが見つからないことから、オーダーメイドへの関心が深まったと話してくださいました。
完成したのは、穏やかで優しいお二人の雰囲気からは少し意外な、指元でくっきりと存在感のある指輪でしたね。
試着で自覚した、本当に欲しい結婚指輪
ジュエリーショップを何軒か尋ねてから新宿アトリエにいらしたお二人は、ご自身の好みが何となく分かりはじめていました。
お二人ともシンプルで華奢な指輪よりも、太幅で存在感のあるデザインに惹かれ気味。特に女性は、ゴールドとプラチナの2色づかいのデザインが気になるご様子でしたね。
詳しくお気に入りの指輪を探るために試着を始めると、とても熱心にさまざまなデザインを手に取ってくださるお二人。すると女性が、
「自分に似合いそうにないものまで、全部試着できるんですね」
ずらりと目の前に並ぶ指輪を着け比べながら、嬉しそうに一言おっしゃいました。試着したい指輪を見るたびに、都度ショーケースから取り出してとリクエストしなくて済むから、気兼ねなく試せると喜んでくださいました。
さらに、ご自身の中で意外な発見も。興味があるコンビカラーの中でも、遠目からも2色づかいだと分かるはっきりコントラストのあるデザインが好みだと気づかれました。
「さりげないデザインをイメージしていたけれど、じっくり着け比べないと分からないものですね」
今まで試着したコンビカラーの指輪が何となくピンとこなかった理由が、やっとはっきりした女性。プラチナとゴールドの比率にこだわってデザインを選ぶことが決まりました。
くっきりはっきり、メリハリの効いたデザインで
男性はご自身の中で、太めの幅の指輪にしたいとご希望でした。女性と一緒にいろいろ試着してみると、具体的にお気に入りのデザインが見つかりましたね。
目に留まったのは《クリスターロ》と《槌目 夏》、どちらも表面に凹凸のあるデザインが特徴です。
お気に入りのポイントは、光が当たるとはっきり陰影が出るデザイン。特に模様のエッジがくっきりシャープで、光が当たったときの立体感が美しい《クリスターロ》をコンビカラーで仕上げることが決まりました。
男性は当初、あまり口出しせずにおこうと思っていたそうです。
ですが、お互いに歩み寄りお相手の気持ちを確かめながら一緒に進めた指輪選びから、お二人だけのオーダーメイドのデザインが生まれました。
「お互い、希望のデザインにあまりズレがなかったから」
口にはしなかったけれど、本当は太めの幅にしたかった男性。自分から言うまでもなく女性の好みも太めのリング幅だったことも、男性の遠慮を和らげたようです。
女性としても、自分がコンビカラーにこだわった分、男性にも好きなデザインを選んでもらいたいと考えていらしたため、男性のご意見を歓迎されました。
《クリスターロ》はシャープな凹凸があるデザイン。お二人の指輪はプラチナの内側にゴールドを張り合わせる分、厚みが増します。そのため、隣の中指と小指の感触に違和感がないか気になるところです。
そこでお二人には、指輪の試作オプションをご提案。一度くっきり凹凸を出した状態の指輪を試作し、着け心地を確かめながら模様の加減を調節し、見た目も着け心地もじっくりご確認いただいてから本制作を進めようと決まりました。
婚約指輪は、結婚指輪と重ねて着けられるように
お揃いの結婚指輪が見つかったところで、婚約指輪選びがスタート。男性はプロポーズのときに、女性へプロポーズリング《エレガント》を贈ったときから、改めて婚約指輪もプレゼントするつもりだったそうです。
“婚約指輪に合わせるのではなく、二人が気に入る結婚指輪を選びたい” という女性の配慮から、まず結婚指輪のデザインを決めてから婚約指輪選びがスタートしました。
いくつか見つかったお気に入りの中には、カーブが美しい《ムーン》がありました。
サイドの小さなメレダイヤをご自身の2月の誕生石・アメシストに変えて、4月生まれの男性の誕生石・ダイヤモンドと2種類の宝石を使うデザインを思いつき、お二人を象徴するようで特別感を感じたためです。
女性が悩まれたのは、結婚指輪との相性でしたね。
ロマンティックさは満点だけど、結婚指輪と重ねたときに、デザインのテイストも指輪のフォルムも違いすぎて、一緒に着けられる雰囲気ではありません。もしも先に《ムーン》を選んでいたら、結婚指輪のデザインは違うものになっていたかもしれません。
そんな悩みを払拭してくれたのが、ストレートフォルムの《イリス》でした。
《イリス》には側面までしっかり彫り模様が施されており、着けたご本人からもちらりとスターアニスの模様が見えます。
何よりの決め手は、結婚指輪との相性のよさです。
重ねたときにそれぞれのデザインが引き立ち、普段の服装にもよく合うことから、たくさん身に着けることができそうだと思い至りました。
また、正面のデザインは婚約指輪らしく、センターには大きめのダイヤモンドを。どの角度から見ても、キラキラと眩い婚約指輪です。彫り模様のクラフト感が、お二人の指輪らしさをぐっと高めてくれます。
こちらは元から凝ったデザインなので、アレンジは加えず制作することが決まりました。
絶対にお揃いにしたい夫婦の証
試作も経たお二人の指輪づくりは、冬に始まりお手元に届く頃には桜の季節を迎えていました。お揃いの婚約指輪に加え、お二人は婚約指輪の制作もお任せくださり、とうとう3点の指輪のご納品です。
「ピタっ!と結婚指輪と重なるのが、着けたときに気持ちがいいんです」
結婚指輪に婚約指輪を重ねて喜ぶ女性の傍らで、さらに嬉しそうに微笑む男性の笑顔が印象に残っています。指輪を着けたときの笑顔や、愛おしそうに何度も薬指を眺めてくださる眼差しは、つくり手である私たちにとってご褒美のようであり、達成感を覚える瞬間です。
一緒に試着する中で、お互いの意見が自然と重なったお二人でしたが、初めから“デザインはお揃いにしたい”、そして“外す理由がない限りずっと着けているもの” と考えていたそうです。
「両親の指輪がお揃いなので、無意識に憧れていたのかもしれません」
そのお言葉にご両親と過ごしてきた幸せなお時間を垣間見る思いで、この指輪がお二人の人生を見守ってくれることを願いました。
「二人のお気に入りの要素を組み合わせて、同じデザインにできて嬉しいです」
さらにお二人は完成した指輪を、つくり手の私も含めて“三人で作った” と仰ってくださいました。選ぶだけではない作り上げる楽しみを感じていただいたことに加え、完成が嬉しい指輪に仕上がり私も喜んでおります。
手元を見るたびに二人で身に着けることが嬉しくて、傍目にも結婚指輪だと分かるデザイン。そして、365日いつも身に着けていたいかけがえのない夫婦の証である特別感。お二人の気持ちが形になりましたね。
お互いの指に指輪がある喜びを、末永くお二人で分かち合っていかれますように。