【ithのものづくり】接客担当の“つくり手”が、職人の実技研修を受講しました

工房が近い、ithのアトリエ


ithは女性職人である代表の高橋亜結が、現在の吉祥寺アトリエの工房と応接室を兼ねた小さな部屋で、ひとりきりで指輪制作と接客を行うところからスタートしました。

現在では、全国に8つあるアトリエで“つくり手” が接客を担いを、吉祥寺アトリエの階上にある工房と事務所で職人と事務スタッフが指輪制作を担当し、指輪ひとつひとつをお客様のオーダー内容に沿って制作しています。

“つくり手” はお客様と接するだけではなく、お客様のご要望と工房をつなぐ架け橋として、重要な役割を担っています。そしてithにとって、ものづくりは重要なアイデンティティであり、規模が変化しても変わらない大切な理念です。



実際に制作して体感する、“ものづくり” への情熱


指輪を制作するのは職人なので、つくり手は実際に指輪を作るわけではありませんが、ithではつくり手にも実技研修の時間を設けています。

吉祥寺工房の現役の職人が、ithのコレクションリング制作の工程をレクチャーし、実際に指輪を制作します。

講師はith吉祥寺工房で活躍する引間さん

3月度の研修に参加した4名のうち、大宮アトリエ主任の福島さん・柏アトリエの板橋さん・吉祥寺アトリエの小川さんに、研修に参加してみてのお話を伺いました。余談ですが、板橋さんは元々ithのお客様で、結婚指輪をオーダーいただいた後にご縁あってithで働くようになったという経歴の持ち主です。(以降、敬称略)



- 今回は、どんな作業工程を教わりましたか?


平打ちリングの研磨と、いろいろなテクスチャーの表面加工の方法です。

鋭利な工具で模様を施す“メーゼ”の加工

テクスチャーは、ツルツルに磨き上げる鏡面加工をはじめ、ロチア・メーゼ・槌目 秋・スターダストの合計5種類を教わりました。



- 実際に指輪を作ってみると、やはり難しいですか?


小川:全て難しいと感じたけれど、特に指輪の内側をツルツルに磨き上げるのが、とても難しかったです!

福島:私は制作側の経験がありますが、平面ならまだしも、弧のついた曲面に手作業で均質な模様を施すことは、難易度が高かったですね。でも、指輪を磨く工程で、少しずつ光沢が生まれてくると作業に夢中になり、ものづくりをしていた学生の気分を思い出し楽しかったです。

- 作業自体は楽しそうだし、集中して取り組まれていましたよね。

板橋:槌目模様は、リズミカルにハンマーで打つ作業が楽しかったけれど、模様を打ち出す場所や強さの加減が難しくて、仕上がった模様は本来の槌目 秋とは違ってしまいました。やはり、反復して同じように作業しなければ綺麗な模様が生まれず、やってみると本当に難しいものですね。

- 職人さん達の作業はスイスイと進んで容易そうに見えるのに、やってみると思い通りには行きませんね。



- 教わった以外で、やってみたい加工はありますか?


板橋:刻印と、宝石のセッティングですね。

小川:私も石留めです!

- 難しそうな作業ですが、お二人は興味津々のようですね。

福島:表面のテクスチャー加工も一通り経験してみたいですが、磨きの工程を綺麗に仕上げられるまで継続して練習したいです。

- 鏡面加工は、“何もしていない” と思われがちですが、実際は手の込んだ加工なのですね。



- 改めて自分で制作してみて、何か感じることはありましたか?


板橋:自分が作った指輪には、ものすごく愛着が湧きました。他のメンバーと比べてもとても不恰好な出来栄えだとは思いますが、それでも、自分の手で加工を施した、一点物としての価値と満足を感じています!

- ithの指輪は、全てオーダーメイドの一点物ですものね。

福島:私も同じように感じます。同時に、職人は完成した指輪を直接お会いする機会のないお客様へお渡しする寂しさを感じそうな気がしました。お客様から職人へのメッセージをいただいたら、よりしっかり伝達したいと思います。

小川:実際に作業を経験すると、ものづくりがぐっと身近になりますね。

- 技術面以上に、気持ちの面で指輪への親しみが深まるようですね。



- こうして教わった実技経験は、普段のお客様対応に活かせそうですか?


全員:活かせます!

小川:自分で体感すると、リアリティのある自分の言葉でデザインや制作についてお話ができるようになると思います。

福島:デザインや工程について説明するときに、“職人じゃないし…” と腰が引ける感覚が薄れます。想像ではなく、実体験として熱量を持ってお話ができるので、お客様にも積極的にご紹介しやすくなります!

- お客様からご質問を受けても、ますます自信をもってお返事できそうですね。

板橋:例えば鏡面加工はプレーンな仕上がりですが、顔が映り込むまでツルツルに仕上げるには、時間も掛かるんですよね。全ての作業に手間暇が掛かることを、改めて実感しました。

お客様の中には、“オーダーメイドなんだから、何か変わったことを” と、何とかしてデザインを変更しようと希望される方もいらっしゃいます。ですが、例えベーシックなデザインでも、オーダーいただいた指輪は、そのお客様のためだけに仕立てる一点物であることに変わりないことを再確認しました。

本質的な“オーダーメイドの特別感” と、その魅力を理解していただけるよう、お客様に丁寧にお伝えしたいです。

- まさに、工房とお客様の架け橋ですね。



- つくり手の皆さんは、職人の仕事をどう捉えていますか?


小川:こだわりと誇りをもって、お客様の指輪を作るプロフェッショナル。

板橋:納期や時間に追い込まれながらも、指輪に対しての思いを人一倍もっている技術のプロ集団。

福島:ithの職人は、他のジュエリー職人よりもお客様に近い印象です。お会いしないまでも、個々の指輪の持ち主となるお客様の情報を知ることができますから。細やかな手仕事を感じるとかっこいいなと感じますし、毎日ものづくりをしていることを羨ましくも感じます。

- お互いの存在があって、初めてお客様に指輪をお届けできる、緊密な協力関係が窺えますね。



- ありがとうございました。それでは最後に、せっかくコメントをいただいた皆さんから自由に思いの丈をぶつけていただきましょう!


▽ 柏アトリエ:板橋さん
柏アトリエのお隣には、セントマーガレット大聖堂があります。週末になるとウェディングベルがアトリエ内にも鳴り響きます。市街地から少し離れた穏やかな立地で、大切に育てている緑豊かな植物に囲まれながら、お二人の指輪選びを精一杯お手伝いさせていただます。


▽ 吉祥寺アトリエ:小川さん
吉祥寺アトリエは、上に工房があるので職人の皆さんとの距離も近いですし、金属を叩くなどの指輪制作を音で感じることもできます。アトリエにお越しの際は、ものづくりのムードも味わってみてください!


▽ 大宮アトリエ主任:福島さん
大宮アトリエとしては、指輪制作に携わる方々と積極的に関わりを持ちたいと思っています!お客様から「職人さんによろしくお伝えください!」と仰っていただく機会が多く、工房との橋渡しの役割を認識していただける喜びもあります。

アトリエでのエピソードやお客様の声を、制作側の方にしっかりお伝えしていこうと思います!!

- 皆さん、長時間の研修お疲れ様でした!



- インタビューを終えて


ithのつくり手の仕事は、一般的には接客・販売業務に当たりますが、各々に志望動機を尋ねると、ジュエリー専門学校出身だったり、販売経験に飽き足らず、ものづくりへの興味から転職を決めたと答るメンバーが多く在籍します。

実技研修に参加した皆さんのお話からも、ものづくりに対する敬意をベースに、お客様にとって特別な“一点物” をお届けすることに対する、誇りや思い入れが伝わってきました。

ithのつくり手とお話をする際には、ぜひ指輪の制作工程や、デザインへのこだわりなどをお尋ねください。きっと、選んだ指輪にますます愛着が湧くような、興味深いエピソードに出会えるはずです!

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