【指輪へのこだわり】デザインを形にするための道具


リング作りの工程へのこだわり


私がリングを作る上で、一番大事にしている作業はヤスリがけの工程です。

金属の切削を行う道具をヤスリといい、リングの表面を削り、形を整えて、幅や厚みをデザイン通りの決められた寸法にするための加工工程のことをヤスリがけと言います。

ithのリングの形にはいろいろなデザインがあり、カーブが伸びやかなデザイン、多面のデザイン、シンプルで鏡面仕上げのデザイン、それぞれのリングの形や特徴に合うよう、ヤスリがけは慎重に進めなければならない工程で、この作業には特にこだわりを持っています



職人の大先輩から教わったこと


私が職人として修行した工房には、当時職人の先輩が5人いました。みんなで共有して使う道具もありましたが、皆ヤスリだけは自分専用のものを用意し、使っていました。

職人にとってヤスリはそれくらい大事な道具であり、ヤスリがけは良い形を作るための基礎、ヤスリがけが上手くできないと職人としては半人前で、思い通りの形を整形する感覚を身につける修行に毎日を費やしたことを思い出します。

'良いものづくりは、仕上げの道具でごまかすのではなく、最初に形を整形するヤスリの作業できちんと形を仕上げる必要がある'、ということも職人の先輩から教わりました。



リングの制作に使う道具


先日、植物のような生命力のあるラインに特徴を持つ、新しいデザインのエンゲージリングを制作しました。一つの面の形を作るために、いくつもの種類のヤスリを用意し少しずつ削り、形を整形して完成しました。

しなやかな曲線のラインを作るために丸いヤスリを使うのですが、1本のヤスリで単調に削り出すのではなく、1cm四方の面積を仕上げるのに5本のヤスリを使い分けて作業を進めます。

手にしっくり馴染んでお気に入りのヤスリもあれば、たくさん地金を削りたい時に使うヤスリ、細い隙間を削る極細のものまで、少し削っては道具を変え、また元のヤスリに戻して、と納得のいく形を模索しています。

また、ヤスリがけの後に仕上げをする道具も無数に用意して作業をします。他の人から見ると、同じように見える道具をいくつも用意し、仕上げたい形にしっくりなじむ道具を選択してリングを作ります。



道具を使いこなして制作するリング


ithのコレクションリングの中でも特に、形が複雑なために道具を駆使して作るリングがあります。

Luce《ルーチェ》は、多面で一面ずつの形が違うため、不規則な面を光沢に仕上げるのがとても手間暇のかかるリングです。《ルーチェ》とは、イタリア語で'光'という意味があり、由来の通り光輝く多面が特徴のデザイン結婚指輪です。

Luce《ルーチェ》コレクションページ

また、Bolla《ボーラ》というリングも、フォルムに個性のあるデザインです。

大きさの違うカップにダイヤモンドを留めた形で、シャボン玉のようなふんわりと丸い形をリングの内側に施すのは、職人泣かせのデザインです。

リングを作る時の、形を作る基礎は'ヤスリがけが肝心'と教えられましたが、形の良し悪しや美しさを決めるのは、特に先端、際(きわ)が肝心なんだ、ということもヤスリがけの作業を習得する上で習いました。

先端やラインのエッジをきちんと仕上げるかどうかで、それぞれの作品に緊張感が生まれます。

Bolla《ボーラ》コレクションページ


彫金の技術を修練する課程で習ったこと、教えてもらったことが今のithのものづくりに通じていると思うと、基本は大事だと改めて感じます。

これからも結婚指輪という特別なアイテムへ携わる責任を忘れず、誠実なものづくりにこだわります。



ith  高橋亜結

この記事はいかがでしたか?

回答すると、ほかの方の反応がわかります。
あなたはどっち?

この投稿をシェアする

【指輪へのこだわり】デザインを形にするための道具