【指輪へのこだわり】地金と対話して作る形


地金の性質


リングの素材となる金属のことを地金(じがね)と言います。

それぞれの地金には個性があり、例えばプラチナは粘り強く、形を素直に作ることができる性質、ゴールドはサラサラとしていて削りやすい性質があります。金属それぞれの個性を理解し対話するように加工をすると、冷たくて硬くて、頑固な金属でも、柔らかい表情を引き出すことができると私は思っています。

金属のぬくもりと柔らかさを引き出す


地金の性質を理解して上手く利用できるかどうかは、職人としての腕の見せ所です。金属であっても、ぬくもりと柔らかさのあるデザインが、他にはないithのコレクションリングの強みだと考えています。

'金属は柔らかい素材'、ということを私に教えてくれたのは、学生時代の彫金の恩師です。'金属は硬いもの、という固定概念を覆すものづくりをしてほしい'、といつも繰り返していて、その言葉が私の金属工芸に携わるはじめの一歩でした。

金属を扱って20年が経ちますが、伸びやかな動きや、繊細な表情を込めることに今も夢中で、新しいリングデザインの形を考える時には手を動かし、地金と対話をしていると、時間が過ぎるのを忘れて作業にのめり込んでしまいます。

指元にしっくりなじむ形も、優雅に曲線を描く形も、結婚指輪という幸せを表現するアイテムだからこそ、柔らかくそっと身につける人に寄り添うものにしたいとこだわっています。



柔らかい表情のあるリング


Mobius《メビウス》というデザインのリングがあります。このリングは、実際に地金をツイストして作った形で、立体感が特徴のデザインです。

'地金は硬いもの、ひねったりすることが本当にできるの?'と、つくり手の一人に尋ねられたことがありましたが、地金の性質を理解して、無理のないように加工をすれば、素直にひねりを加えることもできます。ひねり部分の地金が表から側面、そして内側へ流れるようなラインで豊かな表情のメビウスリング。横からのフォルムにも曲線があり、愛おしさを感じます。

Mobius due《メビウス ドゥーエ》のコレクションページ


ithのコレクションにあるVivace《ヴィバーチェ》というリングも、曲線にこだわった形のデザインです。

ithが始まった当初からあるデザインで、初期のリングの中でも思い入れのあるリングの一つです。リング全体にS字のカーブがかかっていることが一番のポイントで、表面も手のひら側もS字カーブになっていることで、指につけた時のしっくりなじむ感じが体感できる形になっています。S字の形状になっていて、左手薬指の水かきの高さに合うよう造形された形は、'拳を握った時にリングを着けていても違和感がない'とお客様からよく言っていただける着け心地の良いカーブのリングで、私の自信作です。

つや消しのヘアラインが長く穏やかに入ることで、メリハリのあるデザインにお仕立てしています。

Vivace《ヴィバーチェ》のコレクションページ


リングは小さなアイテムだからこそ、形の表現に細やかな注意を払って完成させなければいけないと私は考えています。心を込めて小さな部分に表情をつけてこそ、お客様が気に入って一生涯を共にする大切なものになると思います。細部に宿るこだわりこそが、人の気持ちを感動させるのです。


ith 高橋亜結




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