希望したのは特別なカラーストーン
“アレキサンドライトを留めた指輪をつくりたい”
それが女性の一番のご希望でした。
希望するカラーストーンの【アレキサンドライト】は、当たる光の色によって宝石の色も変化する、変色性という性質を持つ稀少な宝石です。
女性の誕生石であり、色が変わるところことから “身につけていて飽きない指輪が作れそう” と気に入り、アレキサンドライトの結婚指輪探しが始まったのだそう。
男性の指輪はすでに別のショップで選び終えたものの、女性の指輪だけなかなかデザインも含めて気に入る指輪に出会えず、デザインにもこだわれるオーダーメイドのお店を探す中、ithを見つけてくださいましたね。
試着で指輪のイメージを形に
アトリエにいらしたときには、すでに大まかなデザインイメージをお持ちでしたね。
・結婚指輪と婚約指輪を兼ねたい
・中央に少し大きめのアレキサンドライトを留める
・両サイドに小さなダイヤモンドをあしらう
いただいたご要望を元に、指輪づくりがスタート。
ithのコレクションリングの中で、イメージに近い婚約指輪のデザインをご試着いただきながら、具体的なご相談を進めていきました。
安心して身に着けられる石留め
“毎日身に着けるので、高さを抑えて、宝石による引っ掛かりをなくしたい”
いただいたご要望に加え、中心に留めるアレキサンドライトは、一般的なラウンドカットよりも表面積が広くカラーストーンの石留めに向いている、楕円形の“オーバルカット”が理想の形でした。
そこで、引っ掛かりのない石留めとして、“覆輪留め”をご提案。
婚約指輪で一般的な細い爪で宝石を支える立体的な “立て爪”とは異なり、覆輪留めは宝石の周りをぐるりとフラットな金属で包み込む石留めの技法です。
宝石と周りの金属のフレームが滑らかにつながり、指元で引っ掛かることなく日常で安心して身に着けることができます。石座の高さも低めにすることで、さらに凹凸を控えた石留めを目指しました。
石留めに合うリングの形状は?
“リングにカーブがかかれば可愛いと思う”とおっしゃる女性。
躍動感のあるデザインがお好みで、やはりサイドに小さなダイヤモンドが並ぶデザインに惹かれるご様子です。
お気に入りは、《オブリーク》と《フューメ》 の2種類のデザインでしたね。
▽ 婚約指輪:《オブリーク》
▽ 婚約指輪:《フューメ》
特に《オブリーク》は、着けてすぐに “可愛い!” とお気に入り。指輪自体はストレートな形状ですが、ダイヤモンドの配置が斜めに流れるようにカーブを描く、動きの感じられるデザインです。
ご希望のオーバルカットのアレキサンドライトとの組み合わせを、イラストに起こしながらデザイン画で比べてみました。
すると、覆輪留めと相性がいいのは、真っ直ぐなリングアームの《オブリーク》。こうしてベースのデザインが決まりました。
アレキサンドライトの選定をご自身で
デザインが決定した後日、オーバルカットでご希望に合うサイズのアレキサンドライトを2石取り寄せることができました。
天然石は同じ種類でも、少しずつ個体差のあるため、実際にご自身の目で見て選定していただきました。
女性はご自身の感覚に従い、黒く深みのある色合いを持ち、より鮮明に色が変化する方の宝石を選択。特別な1石が決定しました。
実際にアレキサンドライトの変色性を制作前に目にすることができ、喜んでくださいましたね。
試作リングで仕上がりをチェック
フルオーダーメイドでの指輪制作を安心して進めるため、本制作の前に試作を行いました。
試作リングはシルバーとジルコニアで制作しますが、宝石の配置や石留めの細部まで、具体的にデザインを再現して制作されます。
実際に留めるアレキサンドライトも、センターストーンにかざしてイメージを最終確認。
宝石の選定、そして試作リングのご試着。確認を重ね、本当にご納得いただき本番の制作がスタートしました。
婚約指輪でもあり、結婚指輪でもある特別な存在
何度もアトリエでお打ち合わせを重ね、時間をかけて完成した指輪は、ディティールまでこだわったデザインと、ご自身で選んだ世界でたったひとつのアレキサンドライトが輝く、特別な指輪となりました。
婚約指輪での特別感と、結婚指輪の日常使いのどちらも叶えた唯一無二の存在です。
“自分たちの想像を遥かに超えるものが出来上がってとても嬉しく思います”
ご納品の後でいただいた温かなメッセージをいただき、私もとても嬉しく思っています。
つくり手としても、特別な指輪作りに携わり、素敵なデザインに出会えた思い出はとても大切な宝物です。