“リメイクでネックレスを制作できますか?”
お母様の婚約指輪を譲り受けた女性が、リメイクによるネックレス制作を望まれアトリエを訪ねてくださいました。
お持ち込みいただいたダイヤモンドは0.23ct。すでにデザインイメージがあり、一粒石のダイヤモンドが際立つデザインをご希望とのことです。
指輪のイメージが強いith(イズ)ですが、実はアニバーサリーネックレスのお取り扱いや、表参道アトリエ限定のリメイク制作も承っています。
今回は、自身がジュエリー職人であるith代表・高橋亜結が、お客様とたくさんご相談を重ねて “シンプル” なリメイクネックレスが完成するまでのエピソードをご紹介します。
ご希望は “プチネックレス”
ご相談にお越しになる前から、女性の中では作りたいネックレスの構想が固まっており、イメージ画像をお持ちくださいました。
画像を拝見すると、ベースは一粒石のダイヤモンドをあしらった、一見するとシンプルで普遍的なデザインの“プチネックレス”。
より詳しく確認してみると、細長いコマを組み合わせたチェーン珍しく、ベネチアンチェーンとスネークチェーンの要素を併せ持つようなつくりです。
ithでご用意している小豆・ベネチアン・シャインカットのどの形状とも異なるため、同じようなチェーンをお探しする必要があります。
何よりリメイク制作の際は、お預かりした宝石のコンディションを見極めることが重要です。
元のジュエリーから取り外した宝石が、新しいジュエリーにセッティングする工程を経て破損するリスクがないか、まずは状態を確認させていただくことが先決です。
お打ち合わせでデザインのご要望を伺うと同時に、状態を確認するために大切な指輪をお預かりしました。
- 参考:プチネックレスとは?
華奢なチェーンにペンダントトップが一体化したデザインの、シンプルなネックレスを示します。チェーンにチャームが吊り下がるデザインと比較すると、より素肌に馴染みヌーディーで落ち着いた印象で身に着けることができます。
お預かりしたダイヤモンドの状態をチェック
リメイクを含め、お手持ちの宝石からジュエリー制作を承る場合は、ithでは可能であれば鑑定書をご一緒にお預かりしています。
どのような宝石なのか鑑定書で確認することで、より安全に制作加工を行うことができるためです。
今回お持ちいただいたダイヤモンドは鑑定書が見当たらず、代わりに拡大検査を行い加工に耐えられない傷や欠けがないか確認しました。幸いにもコンディションに問題点はなく、無事オーダーを承ることができることに。
“作っていただける方向でお話が進み嬉しいです。
多少時間が掛かっても大丈夫です”
無事リメイク制作を承ることができるものの、チェーンやデザインのご提案までもう少しお時間をいただく旨をお伝えしたところ、女性は喜びのお返事をくださいました。
“シンプル” を深掘りして見つける、
本当に欲しいデザイン
ご希望のイメージは細めのチェーンに宝石を一粒あしらったネックレス。
シンプルだからこそ、チェーンとペンダントトップの組み合わせ次第で、仕上がりの印象がガラリと変わります。
イメージ画像と全く同じチェーンで制作することが難しいため、高橋は新しくチェーンを探しご提案することに。
イメージに近い類似チェーン4種類に、ithで元からお取り扱いのある3種類を加えた合計7タイプをご用意しました。
《新しくご提案した4種類のチェーン》
1)オクトストローチェーン
斜めにラインのあるデザインで、滑らかな手触りと上品な輝きを放つ
2)トリプルスパイク
三つ編みのようなデザインの立体感が目を惹く
3)小豆S&L
大小のあずきチェーンを組み合わせた表情の豊かさが特徴
4)スネーク
蛇を思わせる滑らかな動きと、しっとり肌に馴染む着用感に高級感が漂う
《ithで扱う3種類のチェーン》
5)ベネチアンチェーン
正方形に近い、四角いコマを並べたデザイン
6)小豆チェーン
最もポピュラー且つ切れづらい、楕円形のコマが連なるデザイン
7)シャインカット
小豆チェーンよりもコマが大きく、抜け感のあるデザイン
2種類のペンダントトップ
ペンダントトップは大きく分けて2種類。
バチカンと呼ばれる通し穴をつけて吊り下げる方法と、ペンダントトップ本体にチェーンを接続する方法(プチネックレス)をご提案しました。
“迷いますね…。組み合わせ次第で雰囲気も価格も変わるため、実際に見ながら決めたいです”
ご提案資料をお送りしたところ、女性よりチェーンの実物を見てみたいお返事をいただき、後日アトリエへご来訪いただくことに。
特に新しくご提案したチェーンは、地金の量も多く通常のお取り扱いチェーンと比べて高価なものばかり。実際にお手に取ってからのご判断が望ましく、ありがたいお申し出をいただきました。
実物に触れて、納得のオーダーメイドを
取り揃えた7種類のチェーンをアトリエでご覧き、最後に選ばれたのは当初のご希望とは異なるベーシックな小豆チェーンでした。
ペンダントトップには初志貫徹のプチネックレスタイプを選ばれ、とうとう正式なオーダー内容が決定。
ダイヤモンドの確認・チェーンの取り寄せ・ペンダントトップのデザインと、順を追ってデザインを決めていき、世代を超えてご愛用いただけるネックレスがかたちにすることができました。
このようにithのオーダーメイドでは、なるべくお客様のご要望を叶えられるよう力を尽くし、どうしても難しい場合は別の方法をご提案しています。
普遍的なデザインをお選びいただいたことで、ご家族から譲り受けた主役のダイヤモンドが際立つ仕上がりが叶いました。
“シンプル” という言葉で思い描くイメージは千差万別ですし、ひと目見て興味を惹かれるデザインと、長く手元に置きたいデザインもまた異なる場合があります。
パッと惹かれたデザインをきっかけに作り上げた、ずっと愛せるオーセンティックなネックレス。
じっくりご要望を伺い、お話を重ねて完成したこのデザインが、身に着けた女性ご自身や、そのお姿を目にしたお母様の幸せな気持ちにつながれば嬉しいです。