“この模様を取り入れたくて”
そう話しながら、
女性は麻の葉がモチーフの
幾何学模様を見せてくださいました。
アトリエを訪れたときから、
心に決めていた彫り模様。
麻の葉は、
魔除けの意味を持つモチーフ。
“いつまでも幸せでいられますように”
お二人の結婚指輪への思いが
このモチーフに結びつきました。
彫り模様入りの指輪が
ithにもあります。
初めは結婚指輪のAlloro《アローロ》に
惹かれましたが、
幾何学模様を美しく再現するには
広い面積が必要です。
側面ではなく、模様は指輪の
表面に彫り込んだ方がよさそう。
様々なデザインの指輪の試着中、
男性もお気に入りの
質感を見つけました。
この、結婚指輪Mese《メーゼ》表面の
シルクのような格子状の模様は、
ithオリジナルのテクスチャー。
極細ラインを1本1本
手作業で指輪に施して
セミマットな質感を作り上げます。
女性は麻の葉模様、男性はメーゼ。
お二人の好きな模様を加え、
結婚指輪を作ることが決まりました。
麻の葉の幾何学模様と、
メーゼのテクスチャー。
ふたつの模様が
美しく調和するデザインは?
つくり手の私からご提案したのは、
指輪の幅を5.0mmと広く取り
ボトムに段差をつけたフォルム。
彫り模様が際立つように、
麻の葉の下地には
セミマットなヘアライン加工を。
そして、段差の部分に
男性お気に入りのメーゼを。
個性的なデザインながら、
肌色に近いピンクゴールドが
手元の印象を落ち着かせてくれます。
こうして、お二人の結婚指輪は
他にはないフルオーダーメイドでの
お仕立てが決まりました。
お二人の指輪のデザインが決まり、
工房での制作がスタート。
指輪の制作は、
各工程のスペシャリストの
分業により進められます。
細分化された工程を
ひとつずつ確実に積み重ねるため、
全工程を管理するスタッフが
適した職人を手配します。
また、オリジナルデザインの指輪は
制作前に多くの下準備が必要です。
例えば、麻の葉の幾何学模様は
レーザー刻印を施すために
新しくデザインデータを作りました。
彫り模様の継ぎ目が分からないよう、
彫り始めと彫り終わりのパターンが
ピタリと重なるように。
太さや幅を緻密に計算し、
データを作成します。
このように、
思う存分職人が腕を振るうための
仕込みのような作業を伴いながら
指輪制作は進められます。
“お客様が喜ぶ結婚指輪を”
その一念でオーダーメイドを承るith。
制作を管理する事務スタッフも
工程を担う職人も
品質にはこだわりを持っています。
今回、麻の葉を美しく彫り込む工程は
一筋縄ではありませんでした。
少しずつ少しずつ、
慎重にを進めるレーザー彫り。
0.1mm未満のズレに配慮する
根気の要る作業であるとともに、
技術力も必要とします。
ベストを尽くすため
何度もトライアルを重ね、
レーザー彫りの技術に優れた職人さんに
ご協力を仰ぎました。
吉祥寺アトリエの職人が
加工したばかりの指輪を手に、
工程管理を行うスタッフが
直接工房にお邪魔してのご依頼。
力を尽くしていただき、
麻の葉模様が完成しました。
指輪が完成すると、
検品担当のスタッフが
厳しくチェックを行います。
チェックをパスして
やっとアトリエに届いた指輪は、
つくり手である私たちの
最終検品を受けます。
お客様と直接お話をし、
指輪への思いを知る
つくり手である私たち。
仕上がり具合はもちろん、
ちょっとしたニュアンスや
アレンジ具合を把握しているため
お客様ご自身の目を持つつもりで
仕上がりを確認します。
お二人の好みがひとつになった、
理想の結婚指輪。
完成した指輪を見たときは
本当に嬉しく、
緊張感から解放された瞬間でした。
たくさんお時間をいただき、
やっとお二人の手元に
お届けすることができた結婚指輪。
“一生の宝物になる”
そう仰っていただくとともに、
スタッフや職人へ
温かな労いのお言葉をくださったお二人。
指輪をお届けする私たちが、
お客様の温かな言葉に
励ましをいただく機会が
たくさんあります。
オーダーメイドの結婚指輪は、
それぞれがオリジナル。
小さな指輪を通じて、
深い思いとご縁が宿ります。
クリーニングやメンテナンスで、
お二人の笑顔と
使い込まれた指輪に再会する日が
今からとても楽しみです。
つくり手 / 平島