【ithのものづくり】お客様の指輪を制作するithの職人 -高梨 良さん-

ithの原点である職人に、指輪制作への思いを尋ねました


1点1点、お客様のご要望に沿ってオーダーメイドで制作する結婚指輪

私たちが指輪をオーダーメイドでお仕立てするのは、ジュエリー職人からキャリアをスタートしたith代表・高橋 亜結の “自分が作りたい作品としての指輪ではなく、お客様それぞれが本当に欲しい指輪を手に入れてほしい” という思いに端を発しています。

今回は、他ブランドで経験を積み、2018年から職人としてithを支える高梨 良さんに、職人の視点から結婚指輪についてお話を伺いました。



決まったオーナーのための“ものづくり”


-本日はよろしくお願いします。早速ですが高梨さんは、職人としてこれまでどのようなキャリアを積まれてきたのですか?

高梨:僕は東京デザイン専門学校のジュエリー・クラフト科で、ジュエリーやデザインを学び、卒業後すぐに職人として就職しました。2021年の4月で、職人としての活動も19年目に突入します。

1点物のジュエリー制作は、初めの4年間で経験がありましたが、その後は主に大量生産品のジュエリーに携わってきました。2社目は長時間労働の中でひたすら生産数を上げることを求められ、なかなか厳しい労働環境でした。今となっては、修行時代と言えそうです(笑) ここまでは“仕上げ”と呼ばれる、指輪制作の中では後工程に当たる制作を担当していました。

3社目が前職に当たりますが、ファッションジュエリーとブライダルジュエリーを両方手掛ける国内有名ブランドに所属していました。ここでは原型制作と呼ばれる、指輪作りの前工程を担当していました。それに加えて修理、つまり一度お客様の手に渡った指輪のメンテナンス対応も手掛けていました。

そして現在はithの職人として、何でもやらせていただいております…(笑)


-ithの1点ずつデザインの異なる指輪制作とは、段取りや求められるスキルに違いがありそうですね。

高梨:同じものを同じように作る場合は、最適化された作業工程に沿って、その精度を上げて行くことで仕事のに質がアップします。決まった工程を担当する単純作業であれば、とにかく手を動かせばいい。

ですが、ひとつひとつデザインが違うとなると、“早く・正確に” という目標は同じでも、制作方法や作業の順序や都度考える必要があります。さらに、ひとつの指輪を一人の職人が完成させようとすれば、様々な技法を習得している前提で、それらを効率よく組み合わせるセンスも必要になります。

協力会社や外部の職人さんの中には特殊な技術を持つ方もいらして、工程の一部をお任せする場合もありますが、お客様ごとのご要望をしっかり解釈して依頼しなければ作業していただくことができません。

ithの職人には、職人としての技術力の他に、ディレクションの能力が必要だと思います。

-なるほど、その他にもithならではのものづくりの特徴はありますか?

高梨:やはり、制作する指輪のひとつひとつが、特定のお客様のためのものであり、“お持ち主が決まっている指輪” を作っていることですね。

ひとつひとつ異なる指輪を作るという緊張感もありますが、1to1のものづくり特有のやり甲斐を感じます。さらに僕らが手掛けるのは結婚指輪ですから、デザイン・人・ものの全てが特別です。



当初のギャップが、現在のやりがいに


-同じジュエリー制作とはいえ、以前とは環境がずいぶんと変わったようですね。すぐに慣れましたか?

高梨:いや、全然! もちろん以前からプライドを持って作業してきましたが、当初は“ここまでやれば十分だろう?” と、先輩の職人からの指摘や検品基準に対して、反発を覚えました。

“目より先に、手が肥えることはことはない” という言葉がありますが、最初はそれこそ、自分の作業の甘い点が目で拾えなかったんです。

ithより緩い検品基準に慣れた目では、指摘された問題点を視認することができませんでした。でも、2週間、1ヶ月と徐々に見えるようになり、追いかけるように技術も上がりました。それに比例して、お客様の特別な指輪を制作することに、強いやりがいと誇りを感じています。


-キャリアを積んでからithに入ると、職人さんや生産管理部門の方は過剰品質というか、“めんどくさ!”と感じる場面に遭遇するようでうね

高梨:否定はできないですね(笑) それだけものづくりの現場からは、お客様の顔が見えづらいということだと思います。

大量生産を手掛けていた頃も、決して不真面目だったり、手を抜いたことはありませんでした。しかし作業と時間に追われる中で、不特定多数のお客様の存在を想像できなくなる瞬間があったことは否定できません。

その点、ithでは決まったお客様のための指輪を作るし、完成した指輪のご納品後にお礼のコメントをいただけることもあります。職人として単純に嬉しいですし。またいい仕事をしようと励まされます。


-当初面倒だった部分が、そのままやりがいに変わった印象ですね。

高梨:はい、大変ですが、ものづくりが好きで職人を志したので、毎度違うデザインを制作する刺激があり、技術やディレクション能力も高まりを感じられます。さらに、お客様から喜びのフィードバックをいただき、独りよがりではない手応えと喜びを感じています。



職人目線で捉える“結婚指輪” とは?


-改めてジュエリー職人の視点で捉えると、結婚指輪とはどんなプロダクトですか?

高梨:ジュエリー全般が高価で特別なものではありますが、結婚指輪は“掛け替えのないもの” だと思っています。

宝飾品というよりは身体の一部のようなもので、長く身に着けるうちに傷がつくことで、むしろ愛着増したりするのは結婚指輪ならではの感覚ですよね。

仮に紛失してしまった場合、技術的には僕ら職人は同じデザインでの再生制作が可能ですが、お二人が結婚の誓いを込めて選んだ思い入れまではコピーすることができません。代わりの効かないものだと捉えています。


-掛け替えのない結婚指輪ならではの、職人としてのこだわりはありますか?

高梨:1点1点丹精込めて作るのはもちろんですが、修理にもこだわっています。

先ほどお話した通り、その個体、その金属であることに意味があるのが結婚指輪婚約指輪だと思うので、なるべく修理でお悩みを解決したいと思っています。

ジュエリーに用いられる貴金属は硬そうな印象があると思いますが、意外と柔らかいんです。重い荷物や硬いものを持って手を握りこむと、すぐに傷がつくし変形する場合もあります。だから、もしものときにはまた気持ちよく身に着けていただけるよう、修理を依頼していただきたいですね。

指輪が外れなくなって消防署のお世話になるエピソードを、テレビでご覧になったことはありますか? そうなると2箇所以上切断されて、指輪がリング状出なくなる場合もあるんですよ。

そういうケースでも残っている地金から、僕たちはできる限り元の状態を復元します。


-切断された金属片からも、指輪に仕立て直せるものですか?

高梨:はい、金属の質量が減っている分を補う必要はありますが、残っている地金を利用して再制作することは可能ですよ!

新しいものを購入する選択肢もありますが、一生ものとして選ばれた元の指輪を身に着けたいという思いには、できる限り手を尽くします。

諦める前に、修理のご相談をいただきたいです。



次回は、修理について詳しく教えてください


-作る職人にとっても、結婚指輪は特別なものなのですね。

高梨:工房のメンバーも、協力会社の職人さん達も、お客様の感動に寄り添いたいと思っています。

お客様からいただくお礼やフィードバックから、僕らがいただいているモチベーションは計り知れません。その感謝を、指輪制作で還元していきたいですね。


-黙々と作業されている職人さんの、秘めたるパッションを感じました。修理できる範囲が広いことは、お客様にあまり伝わっていない部分もあるようですね。もう少し具体的に伺えますか?

高梨:ぜひぜひ!職人はなかなか語る機会がないので、これまで承った修理内容をご紹介します。

《後半へ続く》



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