手仕事の一点物にこだわる理由
ithのリングは、特別な想いを込め全て一点物でお仕立てしています。
リングに込める想いには2つの意味があり、一つがお客様の想い、もう一つがつくり手の想いです。
お客様にとっての想いとは、'結婚指輪は特別なものだから、こだわって自分たちだけのデザインでオーダーしたい'という気持ちや、'二人らしいデザインにしたい'など、結婚指輪という特別なリングに込める想いです。
もう一つ、つくり手の想いとは、ものづくりに携わる私たちのプライドとも言える想いです。
結婚に関わる大切なアイテムだからこそ、一点一点、心を込めてその人の事を考えながら仕立てるリング作りをしたい。特別な意味のあるリングには、手間暇を惜しまず一点物として大切に制作したい、というこだわりを持っています。
誰のものか決まっていないリングを大量生産して在庫として置いておくよりも、身につける人の指に合うサイズで、その人の要望を丁寧に反映させながらリングを作りたいと考えたことがithの想いの原点であり、吉祥寺の小さなアトリエから始まったオーダーメイドブランドだからこその、たくさんよりもひとつを大切にという精神にも繋がっています。
クラフトリングに込める手仕事
ithには、結婚指輪らしいスタンダードなデザインの他に、職人の手仕事のあたたかみを感じるクラフト系と呼ぶリングを数多く用意しています。
ランダムな多面、ゆらぎのあるフォルム、ダイヤモンドの留め方に遊び心を込めたり、線に強弱を持たせたり。シンプルなものに比べ、より一点物という手仕事ならではの二つとして同じ物が作れない、不規則がゆえの良さを追求したリングを制作しています。
ランダムな多面のデザイン
Desarto《デザート》というリングは、砂漠という意味で、風景をリングに込めたデザインです。砂漠に太陽がさんさんと照りつけ、砂粒一つ一つが黄金色に輝く情景をリングに込めました。
風が砂をランダムに運び、不規則な山をつくるような雄大な景色を指輪から感じてもらえるように、と1点ずつ職人がお客様の指のサイズに合わせてランダムな多面を削り出しています。
フォルムにゆらぎのあるデザイン
Mese《メーゼ》というリングにも、手仕事ならではの良いところがあります。メーゼとは、イタリア語で月を意味し、中央に入る丸いモチーフで満月を表現しています。
コンビカラーの技術は、まさに一点物だからこそできるデザインです。リング一つずつに職人が丸い地金をはめ込んで、溶接しています。そしてこのリングには、フォルムに独特のゆらぎがあること、表面に繊細に入る格子状のテクスチャが入っていること、と手仕事ならではの特徴がたくさん含まれています。フォルムにゆらぎをつけるのは、感性が必要です。格子状に線をケガいて入れる細い線は、一本ずつ職人が時間をかけ、表面に手作業で刻みます。様々な技術が加わり、柔らかな表情の、春の夜に浮かぶ朧月のようなデザインのリングが完成するのです。
不規則な線が特徴のデザイン
Pioggia《ピオージャ》というリングも、手仕事ならではのデザインです。ピオージャとは、雨という意味で、結婚式に降る雨は神様の祝福の涙と言われ縁起の良いモチーフとされています。
先日、リングのメンテナンスで4年前にお仕立てしたピオージャのリングをお持ち込みくださったお客様がいらっしゃいました。
経年変化で、表面に入っていた彫りの線は薄くなっていたため、テクスチャを入れ直す加工を承りました。改めてピオージャのランダムな線を入れるために作業机に向かい、リングをよく見てみると、1本ずつの線の太さと強弱、間隔の空け方など、とても複雑で手仕事でしか出せない線だな、と感じました。ラフに線を入れるので簡単なように見えるけど、規則的にラインを入れるよりもずっと難しいのです。全体のバランスを見ながら満遍なく、手仕事ゆらぎを入れる事でこのピオージャというリングの意味、'神様の祝福の涙'が表現されています。
結婚指輪は、長い間身につける夫婦を象徴するアイテムです。特別なものであり、毎日身につけるものでもあるからこそ、本当に気に入ったもの、愛着の湧くものを身につけてほしいと私は強く願っています。
ith 高橋亜結