“譲り受けた婚約指輪をリメイクして結婚指輪を作りたい”
そんな想いからアトリエへご来訪くださったお二人。
女性が譲り受けたという婚約指輪は、70年ほど昔、おじいさまからおばあさまへ贈った指輪でした。
おばあさまがご着用されたのはほんのわずかで、その後は女性のお母様が譲り受けたとのこと。しかし、お母様もご自身の婚約指輪をお持ちのため、譲り受けた指輪はあまり日の目を見ることはなかったそうです。
そして、ついに女性のお手元へと辿り着いた指輪。
代々受け継がれてきたものの、多くの時間を箱にしまわれたままであった指輪が“もったいない”と感じた女性は、毎日身に着けられるよう婚約指輪ではなく結婚指輪としてのリメイクを決めました。
デザインは違えど、同じ彫り模様でお揃い感を
リメイクにあわせて、お二人が指輪選びで大切にされていたのはお揃い感。
女性の指輪には、受け継がれた婚約指輪からダイヤモンドを再利用することから、デザインを全く同じにすることは難しいかもしれないと考えておられたお二人。どこかに共通点を作り、お揃い感を持たせることがご希望のひとつでしたね。
ご試着されたのは、《フォレスタ》という指輪。木肌をイメージして彫り模様が施されたデザインは、まるで枝が指を伝うような有機的なムードが特徴的です。
《フォレスタ》は以前から気になっていたというデザイン。いざ試着してみると、落ち着いた彫り模様とピンクゴールドの組み合わせが、お二人にモダンな印象を与えました。
お互いのお手元も見せ合いながら「イメージ通りです」と気に入ってくださり、《フォレスタ》の彫り模様をお二人の共通のデザインとして、それぞれの形を見つけていくことになりました。
女性の指輪は、ダイヤモンドが際立つデザインへ
先にデザインを詰めていくこととなったのは、女性の指輪です。
リメイクで使用するダイヤモンドは大ぶりのダイヤモンドであるため、ダイヤモンドだけでも目をひきます。
「今後、他の指輪と重ね着けもするかもしれない」と考えた女性は、かたちはシンプルにして、ダイヤモンドは婚約指輪によく用いられる、立て爪で留めることになりました。
立て爪とは、爪のような小さな棒状の金属でダイヤモンドを持ち上げるように留めるデザインです。
婚約指輪の定番とも言える留め方で多くのデザインは4本爪や6本爪が多い中で、女性から「爪の数を8本に変えられますか?」とご質問をいただきました。
6本爪のイメージ
なぜ爪を8本にしたいのかお尋ねしてみると、“8”という数字は、女性のお好きな神話の中でキーポイントになる数字だと教えてくださいましたね。
そしてずっと「身に着ける結婚指輪にも取り入れたい」と考えておられたそうです。
完成した8本爪の指輪
爪を8本にすることで《フォレスタ》の印象も相まってクラシカルなデザインへと変わり、女性の思いが宿る小枝がダイヤモンドを優しく包んでくれているようです。
お気に入りの数字から生まれた爪は、まさに女性を物語るような素敵なデザインのポイントとなりました。
男性の指輪は、お揃いの彫り模様をご自身らしく
一方で《フォレスタ》の彫り模様をからラフさも感じた男性は、もう少し“フォーマルさが欲しい”と考えるように。理想のデザインを探す中で、男性はエッジのデザインに注目されました。
上《ピウマ》/下《アーラ》
つややかな縁取りがあるだけで、同じ彫り模様の指輪でも印象が変わります。
こうしてインスピレーションを受けた男性は、ご自身も縁取りを取り入れることに。
そして完成した指輪は、フォーマルでありながらもお揃いの彫り模様でクラフト要素も楽しめるデザインとなりました。
穏やかで丁寧な男性に、よくお似合いですね。
オリジナルの指輪の完成を待つ時間も思い出に
お二人のデザインがそれぞれ決まり、かたちは違えど同じ彫り模様からお二人らしいお揃い感のある組み合わせとなりました。
指輪の制作期間である2ヶ月の間で、女性だけにお会いする機会がありました。
「意外と彼の方が楽しみにしているかもしれません」とお話をいただき、完成を待つ時間もお二人で楽しみにお待ちいただいていたことが嬉しかったことを覚えております。
かけがえのない、特別な指輪に
リメイク制作には、元のジュエリーから一度ダイヤモンドを取り外し、新しい指輪に留める工程が必ず発生します。
つくり手も職人もいつも以上に緊張しますが、無事に完成した際は、ほっと一安心です。
結婚指輪とのご対面をしたお二人がお互いに指輪交換しながら、とても素敵な笑顔を浮かべていたシーンが印象に残ってます。
さらに後日、「周りからも好評でお任せしてよかったです」とコメントをくださいました。
お二人へ指輪をお届けしてから数年経ちましたが、つくり手の私にとって今でも思い出深いリメイクから生まれた結婚指輪です。
ithでは、お持ち込みいただいたダイヤモンドや宝飾品などを新しいジュエリーへとリメイクを承っております。
※詳しくはこちらをご覧ください。
エピソードを読みながら思い出したお品物はございませんか?
もしそんなダイヤモンドがございましたら、お気軽にご相談くださいませ。つくり手が、誠心誠意サポートをさせていただきます。